前回までで休息期間をカウントする範囲がわかりました。
このカウント範囲でどれだけの長さの休息期間を取る必要があるか、見ていきましょう。
説明は後回しにして、まず時間帯別の表にまとめておきます。
※ 長距離運送以外の場合と長距離運送の場合を区別する基準についてはこちらをご覧ください。
長距離運送以外の場合
■ 11時間以上 ・・・ 努力義務
―
■ 9時間以上11時間未満 ・・・ 義務
―
■ 9時間未満 ・・・ 違反
長距離運送の場合
■ 11時間以上 ・・・ 努力義務
ー
■ 9時間以上11時間未満 ・・・ 義務
ー
■ 8時間以上9時間未満 ・・・ 週2回まで(週3回目から違反、一の運行後継続12時間以上の休息が必要)
ー
■ 8時間未満 ・・・ 違反
なお、ここに挙げた時間はすべて継続の時間です。
分割休息の場合は別のルールがあり、それはまた後日取り上げたいと思います。
分割しない継続の場合の休息期間について、現改善基準との違いが3点あります。
⑴ 「8時間以上」から「9時間以上」に延長されたこと
⑵ 長距離運送の場合を別枠にして緩和措置(週2回までは「8時間以上」でOK)が適用されたこと
⑶ 現改善基準にない「11時間以上」の努力義務を追加されたこと
⑴ と ⑵ はこのまんまで、あまりコメントすることはありません。
付け加えるとしたら、⑵ には「一の運行後、継続12時間以上の休息期間を与える」という条件が付いていることぐらい。
※ 「一の運行」については、こちらをご覧ください。
要注意は ⑶ です。
努力義務ですが、あなどってはいけません。
実は2021年に定められた脳・心臓疾患の労災認定基準というものとリンクしているんです。
この基準(正式名「血管病変等を著しく増悪させる業務による脳血管疾患及び虚血性心疾患等の認定基準」)によると、脳・心臓疾患での労災認定要件の1つに「長期間の過重業務に就労したこと」があります(リンク先PDF1~2ページ)。
そして、休息期間がおおむね11時間未満の勤務の有無は、「長期間の過重業務」をおこなっていたかを評価する際の判断材料の1つとされています(リンク先PDF4~5ページ)。
11時間以上の休息期間は努力義務であり、実際に守れていなくてもそれだけでペナルティが課せられるわけではありません。
でも、乗務員が脳・心臓疾患を発症すると、おおむね6ヵ月前までの評価期間中の休息11時間未満の勤務は労災認定の判断要素になるので、注意が必要なのです。
※ 他の様々な要素と合わせて総合的な評価がおこなわれます。そういう勤務が1度でもあれば即労災認定ということではありません。