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新改善基準の話・第22回 連続運転時間 その2

前回、現行の改善基準での連続運転時間のルールをおさらいしました。
新改善基準でも大まかな骨格は同じですが、細かいところで変更点が3つあります。
 ⑴ 運転中断時間は原則として休憩を与えること
 ⑵ おおむね連続10分以上の運転中断をカウント
 ⑶ 条件により連続運転時間は4時間30分まで延長可
それぞれにめんどうな問題を含んでいるので、1つずつていねいに見ていきたいと思います。
今回はその1つめ
  ⑴ 運転中断時間は原則として休憩を与えること
「えー、今まではそうじゃなかったの?」と思った方、いますよね?
現行の改善基準でも「運転中断」は「休憩」じゃなきゃダメだと思ってる人が多いけど、そんなことないんです。
なぜこんなふうにまちがえて理解している人が多いのか、その原因の目星はついてます。
改善基準の勉強をする人が必ず読む「トラック運転者の労働時間等の改善基準のポイント」(現行版)にこう書いてあるんです。

連続運転時間は 4 時間が限度です。運転開始後 4 時間以内又は 4 時間経過直後に運転を中断して30分以上の休憩等を確保しなければなりません。(6ページ)

この「休憩等」というちょっといやらしい表現が誤解の元ですね。
本家本元の改善基準告示(現行版)には「休憩等」なんて言葉は出てきません。

連続運転時間(一回が連続十分以上で、かつ、合計が三十分以上の運転の中断をすることなく連続して運転する時間をいう。次条において同じ。)は、四時間を超えないものとすること。(第四条の1の五)

「運転の中断」ですから、べつに休憩でなくていいんです。
待機でも荷役でもOKです。
それなのに、「トラック運転者の労働時間等の改善基準のポイント」に書かれた「休憩等」という表現が一人歩きするようになり、さらに「等」が見落とされ「休憩」だけが残って、上記のような誤解が広がった、ということなんじゃないでしょうか。
以上は現行の改善基準の話。
ここからが新改善基準の話です。

前号に定める運転の中断については、原則として休憩を与えるものとする。(第四条の1の八)

とあります。
「原則として」というビミョーな言葉が出てきました。
どういうニュアンスなんでしょうか。

新改善基準通達に例が出ています。

例えば、運転の中断時に特段の事情なく休憩が全く確保されないような運行計画を作成することは、「原則として休憩を与える」ものとは当然認められないものであり、中断時に適切に休憩が確保されるような運行計画を作成することが使用者においては要請されるものであること。(第2の4の⑸)

たとえばの話として、せめて計画段階では休憩を与えるようにしましょう、と言っています。
「改善基準告示(令和6年4月1日適用)に関するQ&A」には、さらに一歩踏み込んだことが書かれています。
一歩踏み込んで、事業者にやさしいことが書いてあるんです。
まず、運転の中断時に休憩を与えられない場合は運行計画を見直すことなどが使用者に求められる、としたうえで

他方、業務の実態等を踏まえ、短期的には見直しが難しい等の特段の事情がある場合には、運転の中断時に必ず休憩を与えなければならないものではなく、例えば、荷積み・荷卸しや荷待ちを行ったとしても、改善基準告示違反となるものではありません。(3-9)

業務の都合で短期的に見直しが難しい場合などは休憩でなくても違反にはならない、と言っています。
そして、これらはすべて例なので、結局、何か説得力がある特別の事情さえあれば、運転の中断が休憩でなくても例外として認められる、と考えてよさそうです。
とはいえ、説得力があるかどうかの判断は人によるので、「特別の事情があれば楽勝」ではなく「しょせん監査する人しだい」と心得ておくべきでしょう。