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新改善基準の話・第32回 休息期間の分割の特例 その3

分割休息について未解決の問題があるので、最後にそれを取り上げておきます。

それは分割休息をカウントする範囲の問題です。

休息期間をカウントする範囲については第15回で取り上げました。

 A説 始業から24時間後まで

 B説 始業から24時間後の休息期間が終了するまで
    (24時間後が休息期間でない場合は24時間後まで)

の2つの説があり、結論は「B説が正しい」というものでした。

分割しない場合の休息期間についてはこの結論を受け入れたうえで、「分割休息に限ってはA説が正しい」とする考え方があります(分割休息A説)。

その根拠は、新改善基準告示でも新改善基準通達でも、分割休息の特例の説明に「1日において」という条件が付いていることです。

ロ 一日において、二分割の場合は合計十時間以上、三分割の場合は合計十二時間以上の休息期間を与えなければならないこと。新改善基準告示 第四条の4の一 PDF 5ページ)(イ)1日において、2分割の場合は「合計 10 時間以上」、3分割の場合は「合計 12 時間以上」の休息期間を与えなければならないこと。(新改善基準通達 第2の4の⑻のア PDF 23ページ)

「1日において」という条件が付くと何が違うのかというと、改善基準告示で1日は「始業時刻から起算して二十四時間をいう。」(新改善基準告示 第二条の1の二 PDF 2ページ)と定義されているのです。

これをそのまま当てはめるなら、2分割の場合は合計10時間以上、3分割の場合は合計12時間以上の休息を、始業から24時間以内に与えなければならないことになります。

つまり分割休息A説になるんです。

ただ、「1日」は日常なにげなく使われる言葉でもあり、上記の「1日において」と書かれている箇所も改善基準告示の定義どおり「始業から24時間」という厳密な意味で読まなければならないかは、評価が分かれるところです。

ここでの「1日」が厳密な意味ではなくて日常的な意味でなんとなく使われているとすれば、「分割休息でもB説が正しい」とも考えられます(分割休息B説)。

もともとB説(分割休息でない場合のB説)が正しいとした根拠は「改善基準告示(令和6年4月1日適用)に関するQ&A」の「3-2」であり、そこには「休息期間について、始業時刻から起算して 24 時間以内に終了するよう与える必要はありません。」と書かれていました。

そして、同じ個所にはこんなことも書かれています。

また、休息期間の計算に当たっては、終業後に1日の休息期間や特例等で定める休息期間が確保されているか確認することが必要です。(「改善基準告示(令和6年4月1日適用)に関するQ&A」「3-2」 PDF 26ページ)

この文中の「1日の休息期間」をA説の休息期間と考えるのは不自然なので、「1日」を「始業から24時間」の意味の厳密な1日と取ることはできません。
このこと自体が、厚生労働省の改善基準にかんする文書に出てくる「1日」が必ずしも改善基準告示の定義どおりの厳密な1日とは限らないことの実例になっています。

そんなわけで、分割休息A説分割休息B説のどちらが正しいかは、現時点で厚労省から公表されている文書だけでは判断することができません。

実は、労働局で2人の労働基準監督官に問い合わせたところ、1人の監督官は分割休息A説が正しいとし、もう1人の監督官は分割休息B説を支持しました。

というわけで、この問題は静岡労働局から労働基準局(霞が関の本局)に問い合わせて回答をもらうことになっています。
もちろん、回答が出たらこのブログでご報告します。