新着情報

What's New

新改善基準の話・第41回 休息期間の分割の特例 その4

分割休息の場合にその休息期間をカウントする範囲をどう考えるかという問題について第32回で取り上げました。

この問題についての労働基準局(本局)からの回答を受け取ったので、今回はそのご報告です。

まず、簡単に問題のおさらいをしておきましょう。

休息期間をカウントする範囲については次の2種類が考えられます(「A説」「B説」というのは便宜的に付けた呼び名で、一般に通用している名称ではありません)。

 A説 始業から24時間後まで

 B説 始業から24時間後の休息期間が終了するまで
    
    (24時間後が休息期間でない場合は始業から24時間後まで)

分割がない継続休息の場合は「A説が正しい」という答えが出ていました(くわしくは当ブログ第14回第15回)。
この継続休息A説を受け容れたうえで、分割休息ではどうなるのか?
つまり、分割休息A説分割休息B説のどちらが正しいのか?

これが静岡労働局から労働基準局に問い合わせてもらっていた問題でした。

今回届いたその回答は、「分割休息B説が正しい」というものでした。

理由は(第32回に書いたように)改善基準で「1日」の定義が決まっているから、ということです。

この回答は改善基準本家本元の労働基準局が出したものなので、ウムを言わせない最終的な「正解」と言っていいと思いますが、わたしには意外なものでした。

実は「分割休息A説が正しいだろう」とタカをくくっていたんです。

タカをくくっていた理由は次の2つです。

❶ 分割休息B説だと継続休息の場合にくらべて分割休息を与える場合の条件が格段に厳しくなる

もともと与えるべき休息期間が継続休息の9時間に対して、2分割休息では合計10時間、3分割休息では合計12時間と長いのですが、分割休息B説だとさらにこの時間を取得しなければならない範囲が狭くなります。

継続休息の場合とくらべて、より長い休息期間をより短い範囲の中で確保しなければならなくなる、ということです。

たとえば、3分割休息の場合、合計12時間の休息期間を始業から24時間のあいだに収めなければならないので、1日の拘束時間にあてられる時間も14時間から最大でも12時間へと自動的に縮んでしまうのです。

❷ 運送業界では、継続休息と分割休息でA説とB説を使い分けるという認識は一般的でない

「運送業界」なんて大きなことを言ってしまいましたが、もちろん業界全体のことを知っているわけではなく、実際にはわたしが知っている範囲での運送業のお客様のことなんですが。

ちなみに、これは運送会社の認識だけでなく、デジタコソフトの労務管理機能でも同じです。

継続休息については、デジタコの2大メーカーのうちF社が継続休息A説、Y社がおおむね継続休息B説を採用していることは、このブログの第14回に書きました。

そして、分割休息についても継続休息と同じで、F社は分割休息A説、Y社はおおむね分割休息B説となっています(いずれも2024年1月現在の仕様です)。

ということは、休息期間をカウントする範囲について今回の回答によって大まかに判定すると、継続休息ではY社が正しくてF社がまちがっており、分割休息ではF社が正しくてY社がまちがっていることになります。

以上が、今回の回答とは違う方の答えが出るものとわたしがタカをくくっていた理由です。

今回の回答の内容は、❶ からうかがえるように運送会社の運行管理・労務管理に大きな影響をおよぼすものですが、❷ に書いたように多くの関係者が現在持っている認識と食い違っています。

そして、この分割休息をカウントする範囲は、新改善基準で新しく決められたことではなく現行の改善基準からそのまま引き継がれる内容ですから、運送会社やデジタコメーカーなど関係者の多くがこれまでも長いあいだずっとまちがった認識を持ち続けてきたことになります。

まちがいを改めて正しい知識を持ってもらうために、労働基準局はもっと積極的にそしてわかりやすい広報活動をおこなう必要があると思います。