1日の拘束時間の続き、長距離運送の場合です。
改善基準通達には「宿泊を伴う長距離貨物運送の場合」と書かれていますが、長いので略して「長距離運送」とします。
今回取り上げるのは、どういう場合が長距離運送にあてはまるか?
つまり長距離運送の条件です。
あくまで改善基準の上での話なので、世の中で長距離運送と呼ばれるものと必ずしも一致するわけではありません。
長距離運送かどうかは、1運行ずつではなく1週間単位で判断します。
1人のドライバーの運行を1週間とおしで見て、条件を満たせばその週の運行はすべて長距離運送、満たさなければすべて長距離運送以外になります。
1人のドライバーの1週間に長距離運送と長距離運送以外が混在することはありません。
条件は2つあり、両方を満たす必要があります。
⑴ 週内のすべての一の運行の走行距離が450km以上
⑵ 一の運行の休息期間が住所地以外
それぞれの中身を見ていきましょう。
⑴ 週内のすべての一の運行の走行距離が450km以上
「一の運行」というのは、このブログの第2回で取り上げた「貨物自動車運送事業の事業用自動車の運転者の勤務時間及び乗務時間に係る基準」という国交省の告示に登場した用語です。
1人のドライバーが所属事業所を出てからその事業所に帰ってくるまでのあいだが「一の運行」です。
往復の距離が450kmというと、弊社がある静岡市からだと西は岐阜県、東は茨城県あたりになるでしょうか。
でも、問題は「一の運行」の走行距離であって、行先との距離ではありません。
たとえばの話ですが、事業所の近場に2つの拠点があって、その2拠点間を繰り返し往復する運行があるとしましょう。
この場合でも、事業所を出てから週内に走行距離が450kmを超えるまで元の事業所に帰らなければ、この ⑴ の条件を満たすことになります。
悩ましいのはいわゆる積置きの場合です。
① 事業所に出勤
② 前日積んでおいた荷を遠方の荷卸地に運んで卸す(場合によっては遠方で宿泊)
③ 事業所近くの荷積地で翌日分の荷を積む
④ 事業所に帰って退勤
中長距離の運行はこういうサイクルを回しているケースが多いと思います。
ここで ① → ② → ③ → ④ の走行距離が合計450m以上だったとしても、② と ③ のあいだでいったん事業所に戻ると、卸運行と積運行はそれぞれ別の「一の運行」になってしまいます。
その場合、特に積運行は450km以上の条件を満たさず、改善基準を文字通りに取るなら長距離運送には該当しなくなります(これが本当に長距離運送として認められないかは、監査の実際の運用を見ないとわかりませんが)。
⑵ 一の運行の休息期間が住所地以外
はじめて読んだとき、わたしはこれを「その1週間に属するすべての一の運行の休息期間が住所地以外」という意味に取りました。
そういう読み方をした人は多いのではないでしょうか。
それは間違いで、「その1週間に属する一の運行のうち少なくとも1回は休息期間が住所地以外」ということなんです。
実質的には「その1週間の休息期間のうち少なくとも1回は住所地以外」というのと同じことですね。
ただし、分割休息の一部を住所地以外で取得するだけでもいいと考えると、ハードルが非常に低くなってしまいます。
運行中継続3時間の分割休息を1回だけ住所地以外で取得し、分割休息の残りは住所地で取得すればいいのですから。
改善基準告示でも改善基準通達でも触れられていませんが、これが「一の運行の休息期間が住所地以外」と認められるかは疑問です。
最初に書いたように、改善基準通達での「長距離運送」の正式な名称は「宿泊を伴う長距離貨物運送」です。
分割休息継続3時間を住所地以外で1回取っただけでは、「宿泊を伴う」とは言えないのではないでしょうか?
* * *
以上、今回は長距離運送の条件を見てきました。
最後に、長距離運送かどうかを判断する単位となる1週間の切り取り方について触れておきましょう。
「1週間の起算日は日曜日」などと法律で一律に決まっているわけではありません。
事業所ごとに就業規則や労使協定で起算日を決めることができます。
でも、「先週は月曜から日曜までを、今週は水曜から火曜までを、それぞれ長距離運送の1週間にしよう」というように、その時々で好き勝手に1週間を切り取ることはできません。
念のため、誤解なさいませぬよう。