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新改善基準の話・第33回 2人乗務の特例 その1

2人乗務、いわゆる「ツーマン運行」ですね。

その定義は「1台の車に同時に2人が乗務すること」だと思いますよね。

正確にいうとちょっとちがうんです。

改善基準には「自動車運転者が同時に1台の自動車に2人以上乗務する場合」と書かれているので、3人でも4人でも「2人乗務」になるんです。

さて、実際にあるかどうかもわからないような余談はさておいて、2人乗務の特例を見ていきましょう。

これは、ツーマン運行では最大拘束時間を延長できて休息期間も短縮できる、というルールです。

この特例は現行の改善基準にもありますが、新改善基準ではその内容を受け継ぎつつプラスアルファの内容が加わりました。

平屋建てだった建物が増築されて2階建てになったようなイメージです。

今回は、現行改善基準にもある、基礎となる1階部分について説明します。

特例は次のとおりです。

 最大拘束時間 20時間
 休息期間 4時間以上

ワンマン乗務の場合、最大拘束時間は15時間または16時間、休息期間は8時間または9時間以上なので、それとくらべるとかなりゆるめられることになります(拘束時間のルールはこのブログの第13回、休息期間のルールは第16回にまとめてあります)。

ひとつ条件があります。

車両内に身体を伸ばして休息することができる設備がある
新改善基準通達 第2の4の⑻のイ PDF 24ページ)

ということです。

以上が現改善基準にもある2人乗務の特例の1階部分です。

新改善基準で増築されあ2階部分については次回に取り上げます。

*    *    *

以下はマニアックな内容でお読みいただいても何の役にも立ちません。

しかも人の揚げ足取りであまり品のいい話ではありません。

改善基準マニアの方のみお読みいただければと思います。

さて、上記の「身体を伸ばして休息することができる設備」とは、具体的にはどんなものなんでしょうか?

新改善基準通達にはそれ以上のくわしいことは何も書かれていません(「車両内ベッド」についての説明がありますが、それは次回取り上げる「2階」部分にかんすることで別の話です)。

「車内に身体を伸ばして休息することのできる設備」には、バスの場合、身体を伸ばして休息できるリクライニング方式の座席で、運転者のために専用の座席が少なくとも1座席以上確保されていれば、これに該当するものである。
「143号通達」第2の3の(7)のロ PDF 11ページ)

バスの例だけで、トラックについては書かれていません。

調べていて気づいたんですが、この通達を作成された方(発出者は「厚生労働省労働基準局長」)、痛恨のミスを犯してしまったようなのです。

この文書の 第2 の部分は6つのセクションに分かれていて、第2の1、5、6が自動車運転者一般を対象とするのに対し
 第2の2 は一般乗用旅客自動車運送事業(タクシー、ハイヤー)
 第2の3 は貨物自動車運送事業(トラック)
 第2の4 は一般乗用旅客自動車運送事業以外の旅客自動車運送事業者(バス)
の運転者を対象として、それぞれ書かれています。

ところが、上記の「バスの場合・・・」と書かれている引用個所は、トラックドライバーを対象とする 第2の3 の中に置かれているんです。

たとえるなら、役所の人が新しい通達の説明にトラック協会の会合にやってきて、バス事業者向けの説明をしてしまったような感じでしょうか。
いずれにせよ2024年4月1日の新改善基準適用をもって効力を失う文書ですし、いまさら目くじらを立てるほどのことではありませんが。